国際税務 日本法人税と米国法人税の基本的な違い

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近年、日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟国では、税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting : BEPS)への取り組みやデジタル課税(Digital Services Tax)の導入に向けた動きなど、世界的な税の枠組みの変化に対処することが求められています。

海外展開における課題の一つに国際税務の仕組みを把握することがあります。
これはグローバル企業にとって優先順位の高い問題です。

世界各国ではそれぞれ特有の税務、仕組みがありそれに対応した税法に準拠して申告する義務があります。

日本の法人税とアメリカの法人税の主な違いとは?

米国では、日本と同じように政府が課す税金(Federal taxes)と地方自治体が課す税金(Local taxes)に加えて、全米50の州の政府がそれぞれ州税(State taxes)を課します。

州によって税率や仕組みは大きく異なるので、海外進出前に調査・検討を入念にする必要があります。

日本の国税庁に該当する内国歳入庁(International Revenue Service : IRS)が、関税(Custom taxes)以外のすべての連邦税(内国税)を執行します。

まず米国の所得税の取り扱いの基礎を知っておきましょう。

連邦法人税(Corporate income tax)の概要

米国では2018年1月1日からトランプ減税(Tax Cut and Jobs Act of 2017)が適用され、米国経済の活性化や雇用の増大に向けて大幅に改正されました。

主な改正項目

・税率が最高35%の累進課税から一律21%へ減税

代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax:AMT)の廃止(個人所得税の代替ミニマム税は存続)

・繰越欠損金の控除が、2年繰戻還付および20年繰越しを廃止し、課税所得の80%を上限として無制限に繰越控除

・適格要件を満たす固定資産について減価償却率が50%から100%へ即時償却

・タックスヘイブン対策税制又は外国子会社合算税制(Anti-Tax Haven (CFC) Rules)の被支配外国法人(Controlled Foreign Company :CFC)の適用範囲を拡大により連結対象として課税されるグループ会社の対象が拡大

・海外子会社などの所得源泉地国と米国の二重課税を回避するために全世界所得課税を廃止してテリトリアル課税(源泉地国課税)を導入。これにより米国法人が10%以上の株式を保有する外国法人から受け取る配当金の海外配当益金不算入

税源浸食濫用防止税(BEAT課税 : Base Erosion and Anti –Abuse Tax)の導入により国外関連者にロイヤルティや利息、保証料などの支払い(税源浸食的支払)を損金不算入とし足し戻した課税所得の10%が通常の法人税額を超える部分をミニマム税として納付

・タックス・ヘイブンの租税回避対策として米国外軽課税無形資産所得に毎期米国親会社レベルで課税するGILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)合算課税の創設

これらの制度は、タックス・ヘイブンの利用による租税回避に対抗しギルティ(罪悪)・ビート(叩く)と呼ばれ米国政府のBEPS防止に対する強い姿勢を示しています。

アメリカ州税(State taxes)の概要

アメリカ州法人税は、州ごとに税率、タックスブラケット、システムが異なりアイオワ州、ニュージャージー州のように高税率の州や、ミズーリ州、ノースダコタ州、フロリダ州のように低い税率の州もあります。

しかし、売上税(Sales taxes)や固定資産税(Property taxes)、物品税のような他の州税が高い場合があるのでそれらを考慮しておく必要があります。